このページは、『南方紀伝』手書き写本全4冊と明治期活字本を第一次照合した際に確認した主要な異同を、種類別・冊別に案内する総合索引です。
総合作業台帳には、写本第1冊から第4冊まで合計151件の主要異同を登録しています。本ページでは全件を機械的に列挙せず、本文の意味、人物・日付、記事の有無、冊構成、成立・伝来の検討に影響する代表例を掲載します。
この一覧の位置づけ:主要異同151件は、全44作業区分・判読対象134ページについて行った第一次判読・第一次照合の管理記録です。写本と活字本の全字句を、丁・段・行番号まで確定した最終校勘表ではありません。
異同があるからといって、直ちに写本または活字本のどちらかが誤りとは限りません。異なる伝本、底本、書写、活字化、記事の圧縮・省略・再配置、誤写・誤刻など複数の可能性があります。
本サイトでは、活字本の字句を写本の「正解」として自動採用せず、写本値、活字本値、校訂上の判断、史実上の注記を区別します。
写本と活字本の主要異同
- ここでいう「異同」
- 主要異同の登録件数
- 異同の主な種類
- 冊別の代表的異同
- 第1冊・巻一
- 第2冊・巻二
- 第3冊・巻三
- 第4冊・巻四
- 一致・近似する箇所の役割
- 異同を直ちに誤りとしない理由
- 校訂本文での扱い
- 原資料での確認方法
- 現在の限界と次の校合
- 引用・利用上の注意
ここでいう「異同」
異同には、一字の違いだけでなく、人名・日付・人数、和歌の作者、記事の有無、説明の詳しさ、傍書・系譜・年号標題の配置、冊末と巻立ての違いも含めます。
- 文字・語句・固有名詞
- 年・月・日、年齢、人数、軍勢数
- 和歌の作者・句・配置
- 一方にのみある記事・系図・奥書・朱印
- 詳しい和文と漢文調の圧縮
- 冊境界と活字本の本文継続
主要異同の登録件数
| 手書き写本 | 公開本文 | 登録件数 | 主な対応範囲 |
|---|---|---|---|
| 第1冊 | 巻一 | 21件 | 活字本第1~12画像付近 |
| 第2冊 | 巻二 | 40件 | 活字本第12~17画像付近 |
| 第3冊 | 巻三 | 35件 | 活字本第16~20画像付近 |
| 第4冊 | 巻四 | 55件 | 活字本第20~25画像付近 |
| 合計 | 巻一~巻四 | 151件 | 写本全44作業区分 |
151件は異なる一字の総数ではなく、校訂管理上の論点数です。巻五は対応写本未確認のため、この151件には含めません。
異同の主な種類
| 種類 | 例 | 公開版での基本処理 |
|---|---|---|
| 事件内容 | 関東へ送る/誅殺する | 両本文を併記 |
| 日付・数字 | 四月十六日/十五日、千余/数千余 | 双方を残し他史料を注記 |
| 固有名詞 | 寛成親王/熙成親王 | 資料別の読みを分離 |
| 本文の有無 | 系図・奥書・寺院建立記事 | 「写本のみ」「活字本のみ」 |
| 記事量 | 詳しい和文/漢文調の圧縮 | 詳しい側の情報を消さない |
| 冊・巻構成 | 写本は終了/活字本は継続 | 書誌問題として検討 |
冊別の代表的異同
以下は151件のうち、本文理解または書誌研究への影響が大きい代表例です。表中の内容は第一次照合記録の要約であり、第二次校訂によって修正される可能性があります。
第1冊・巻一
| 事件・箇所 | 手書き写本 | 明治期活字本 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 俊基らの処置 part-2/第1画像付近 | 搦め取り関東へ下す | 悉く誅す | 事件内容を両方残す |
| 分倍河原合戦 part-4/第2画像付近 | 五月十六日 | 五月十八日 | 日付異同 |
| 明石の浦の歌 part-8/第4画像付近 | 細川和氏の記事近くに配置 | 尊氏の詠歌とする | 作者未確定 |
| 後村上天皇即位日 part-12/第7画像 | 十月六日 | 十月五日 | 双方を保存 |
| 北畠親房書状の日付 part-18/第11画像 | 二月十五日 | 康永二年七月十五日 | 最重要の系統差 |
| 編纂説明・奥書 part-19 | 巻末に存在 | 同じ形では未収録 | 写本固有資料 |
第2冊・巻二
| 事件・箇所 | 手書き写本 | 明治期活字本 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 南帝系図 part-2 | 四頁の系譜線・母方・官位・宮号・後南朝注記 | 同一レイアウトなし | 写本独自資料 |
| 義満元服日 part-4/第13画像 | 四月十六日 | 四月十五日 | 日付異同 |
| 皇位継承者 part-4/第13画像 | 寛成親王 | 熙成親王 | 統一せず併記 |
| 報恩護国院建立 part-5/第13~14画像 | 対応記事未確認 | 建立記事あり | 活字本のみ |
| 南帝譲位・吉野没落 part-6/第14画像 | 記事を確認できない | まとまった記事あり | 写本の大幅省略候補 |
| 室町殿・花御所 part-8/第15~16画像 | 該当記事なし | 三月の移徙記事あり | 記事接続に影響 |
| 第2冊の終点 part-9 | 弘和二年で終了、後筆・朱印あり | 弘和三年以後も続く | 冊構成の差 |
第3冊・巻三
| 事件・箇所 | 手書き写本 | 明治期活字本 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 第3冊巻頭 part-2 | 後小松院系譜・収録年代 | 同形式の説明なし | 冊構成資料 |
| 土岐康行の乱の原因 part-3/第17~18画像 | 島田満貞の策謀を詳述 | 漢文調に圧縮 | 写本の説明性を保存 |
| 南朝残存勢力 part-4/第18画像 | 国・郡・名字を詳しく列挙 | 同内容を圧縮 | 地域史資料として保存 |
| 和平成立理由 part-7/第19画像 | 南軍衰微と交渉を詳述 | 漢文調に圧縮 | 写本の論理を保存 |
| 南北朝合一条件 part-7/第19画像 | 両統迭立・本領安堵・官位平等を詳述 | 同趣旨 | 全文再校合が必要 |
| 相国寺大塔日 part-8/第19~20画像 | 七月二十六日 | 七月二十四日 | 日付異同 |
| 第3冊の終点 part-8 | 応永三年で終了、朱印・後筆あり | 応永四年以後も続く | 第4冊との冊境界 |
第4冊・巻四
| 事件・箇所 | 手書き写本 | 明治期活字本 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 若犬丸の子 part-2/第20画像 | 二人にも見える | 一人・五歳 | 人数を両説保持 |
| 堺焼失 part-3/第20~21画像 | 堺一万軒 | 堺一万間 | 助数詞を併記 |
| 日本国王号批評 part-5/第21~22画像 | 長い和文で詳述 | 漢文調に圧縮 | 写本の論理を保存 |
| 鎌倉府記事の年代配置 part-6/第22画像 | 満兼薨去等が応永十七年条に見える | 記事を漢文で配置 | 年次を改変せず注記 |
| 建長寺の庵名 part-7/第22画像 | 西続庵等にも見える | 正統庵 | 正統庵と仮校訂 |
| 赤松満祐上洛日 part-12/第25画像 | 十二月十七日 | 十一月十七日 | 最重要の日付異同 |
| 写本第4冊の終点 part-12/第25画像 | 応永三十四年で終了 | 長禄二年まで続く | 4冊・5巻問題の中心 |
| 巻末大型朱印二顆 part-12 | 存在する | 対応朱印なし | 写本固有資料 |
一致・近似する箇所の役割
写本と活字本には、大筋または文言が一致する箇所もあります。一致箇所は、崩し字、人名区切り、前後ページの接続、領国配分、事件順序などを確認する重要な手掛かりです。
ただし「ほぼ一致」は逐字同文を意味しません。活字本で補読した文字も、写本原字と同一とはみなしません。
異同を直ちに誤りとしない理由
- 活字本が別の伝本・底本を用いた可能性
- 写本書写時の省略・追記・再配置
- 和文を漢文調へ圧縮した編集
- 崩し字の翻刻差
- 数字・人名・地名の誤写・誤刻
- 傍書・細字・系譜の扱いの違い
- 冊と巻の区切りの違い
一般的な歴史年表と一致する側を自動的に正しい本文とすることも、詳しい側を原形とすることもできません。
校訂本文での扱い
| 状況 | 基本処理 |
|---|---|
| 写本が明瞭 | 写本を基本とする |
| 写本が難読・活字本が明瞭 | 補読の手掛かりとし、補読を表示 |
| 両者が明確に異なる | 一方へ統一せず双方を保存 |
| 一方にのみ記事がある | 「写本のみ」「活字本のみ」と分離 |
| 日付・人数が異なる | 双方を残し、他史料を参照 |
| 判断できない | 判読保留・異読候補とする |
原資料での確認方法
- 各巻の校訂本文と主要異同を確認する。
- 該当する写本冊・partへ移動する。
- 前後の写本画像を続けて見る。
- 明治期活字本の対応画像を開く。
- 字句だけでなく、記事の有無・細字・配置・冊境界を比較する。
- 未確定箇所は判読保留一覧を確認する。
リンクは異同の周辺範囲へ移動するためのものです。第一次対応表は画像単位の概略対応であり、全例に行番号を付したものではありません。
現在の限界と次の校合
- 主要異同151件は第一次照合の管理記録である。
- 全44partの対応画像は確認したが、全印刷頁・丁・段・行番号は未精密化である。
- 写本と活字本の全字句を網羅する逐字校勘表ではない。
- 他写本・残欠・諸本を含む諸本校合は未実施である。
- 写本のみ・活字本のみの記事が、省略・追加・別系統のどれかは未確定である。
- 巻五は対応写本未確認のため、151件には含めない。
第二次校訂では、各異同に写本PDFページ、活字本印刷頁・丁・段・行番号を付し、再現可能な校勘表へ精密化する必要があります。
引用・利用上の注意
- 要約だけでなく該当する写本画像・活字本画像を確認する。
- 写本・活字本・校訂本文のどれを引用するか明記する。
- 補読・異読・未確定表示を削除しない。
- 一方にない記事を「追加」「削除」と断定しない。
- 史料本文の異同と、史実上の妥当性を分ける。
- 閲覧日を記録する。
引用例:北畠親房書状の日付は、手書き写本では二月十五日、明治期活字本では康永二年七月十五日と異なる。